伝統的なヨーグルトの作り方
市販のヨーグルトは永続的に植え継ぐことができない?
残念ながらスーパーなどで売っているヨーグルトの培養微生物は、一回食べて終わりを想定している(それを種にヨーグルトを培養し続けることを想定していない)ので永続的に植え継ぐことは出来ない。
はずだった
が
東北で強く逞しい伝統的なスターターを発見した!
他にも私のように日本でヨーグルトを育て、永続的に未来へ受け継ぎたい。と思っている人の為に、先程の参考書や、作り方、培養微生物の入手方法などを紹介しようと思ったので、ここに書き記しておくこととした。
数世代で死んだヨーグルト
以前私はヨーグルトを作る度に、使ったヨーグルトに記載されている、ヨーグルト菌の名前を書込み、次に作る時には、今までに使ったことのない菌の入っているヨーグルトを探し、わしヨーグルトと混ぜて種とし、新たなヨーグルトを作って、多様性豊かな”わしヨーグルト”を育てる遊びをしていたことがあった。
いずれ日本で手に入る全てのヨーグルトをコンプリートした暁には、世界ヵ国のヨーグルトを買って、わしヨーグルトに混ぜる。
なんて、夢を膨らませていたが
そんな夢半ば、菌の種類は7種類程度になったある日
わしヨーグルトは赤カビのようなものにやられ全滅した。
やはり弱っていたか…
5回目の培養辺りからなんだかゆるいし、水が出ていたので、おかしいなとは思っていた。
世界の発酵食品について、レシピや歴史などが詳しく記載された発酵の教科書『発酵の技法』には、
市販のヨーグルトの培養微生物がスターターとして使い物になるのは、せいぜい数世代までだ。
実験室で分離された分離された株に由来する培養微生物には、実用的な立場から言えば、本質的に安定していないという問題がある。永続的に植え継ぐことができないのだ。
伝統的なヨーグルトは、永続的に受け継ぐことができる。
と書かれてあった。
伝統的なヨーグルトってどこで手に入るんだよ!
やはりブルガリアか?
と、わしヨーグルトを育てる遊びは終わった。
日本で伝統的なヨーグルトを手に入れる方法
そんな傷心のある日、旅行で行った岩手県の結ハウスというドライブイン?で湯田牛乳と言う牛乳を飲み、感動したので同じ会社の湯田ヨーグルトを買って帰り、それを種にヨーグルトを作った。
とはいえ、こいつも数世代の命か…
と思いながら切ない培養活動を行なっていたのだが、
その湯田ヨーグルトがまだ生きていて子孫を残し続けているのだ!
諦めの気持ちが根底にあったので、今手元にある”わしヨーグルト”がいったい何代目なのか数えてもなかった。
こんなことならば数えておくのだった。
強いな。と不思議に思いながらもその成長を喜び、しかし、期待してはいけない!いつか別れる時が来るのだから…
と気づけばもう2年が経過している。
市販のヨーグルトだぞ?
本質的に安定していないんじゃないのか?
日本の、それも岩手の山奥だぞ?
まさか、太古の昔から県外不出の伝統的なヨーグルトを密かに受け継ぎ、現代まで繋いでいたと言うのか。
恐るべき…岩手め
だが私は伝統的なスターターをゲットしたのだ。
これからも伝統的なヨーグルトを永続的に受け継ぐ所存である。
作り方
ヨーグルトの作り方は地域によって様々で、加熱温度や発酵時間などの違う様々なレシピがあるが、今回は私が一番好きな、クリーミーで硬め、コクのあるヨーグルトの作り方です。
材料
- 牛乳/700ml
- スターター(湯田ヨーグルト)/大さじ1
道具
- 鍋
- 温度計
- 保存容器
- 保温できる何か(発泡スチロールやクーラーボックスなど)
①スターターを常温に戻す
②保存容器を熱湯で除菌し、ついでに温めておく
保存容器は大きめの瓶が良い。
③牛乳をコンロの一番弱い火力で82°まで加熱する。
煮立たないように、弱火で混ぜながらゆっくりと加熱しよう。
こうする事で、牛乳のタンパク質の構造を変化させ、濃厚で硬いヨーグルトが出来る。
④温めた牛乳を46°まで冷やす
常温でゆっくりと冷ましても良いが、雑菌が入りそうなので、私は鍋を冷水に浸けて一気に冷やしている。
その場合、冷え過ぎてしまうのを防ぐ為に48°くらいまで温度が下がったら取り出す。
⑤保温容器にお湯を張り46°〜43°にする
温度により発酵時間が変わってくる。
46°で発酵させると約3時間程度で凝固する。 (長く置き過ぎると酸敗してしまうので注意)
43°だと4〜8時間
低温長期発酵の方が乳糖が完全に分解され、やや酸味が強くなる。
3時間という中途半端な時間がめんどくさいので、私は夜仕込んで寝ている間に発酵させ、起きたら冷蔵庫に入れられるように43°にすることが多い。
⑥スターターと少量の牛乳を空の保存容器に入れかき混ぜる
スターターのヨーグルトを牛乳に溶かす為
⑦保存容器に残りの牛乳を注ぐ
出来たら高さをつけて泡立つように保存容器に流し込む。
⑧保存容器の蓋を閉めて保温容器に入れ発酵させる
完成したヨーグルトは冷蔵庫に入れて保存、1ヶ月程度はカビなども付かない。
また無くなってきたら、このヨーグルトを大さじ1杯取ってスターターとし、新しいヨーグルトを作ってゆく。
市販のヨーグルトとは違い、凝固剤や甘味料も入っていないのでプレーンな本来のヨーグルトを楽しむことが出来る。また、甘くないので、ギリシャ、ブルガリア、トルコやインドなどの料理使いに最適。
ヨーグルトサラダのレシピ
- キュウリ:1本
- トマト:1個
- 玉ねぎ:1/4個
- ヨーグルト:大さじ5程度
- ニンニクすりおろし:小さじ1/2
- 塩コショウ:少々
- クミンパウダー:少々
キュウリ、トマト、玉ねぎを細かく切り、その他全ての材料と混ぜるだけ。
の簡単なレシピだが、インドやトルコなどの国数各国でこの様なヨーグルトサラダが食べられている。
酒のあてにもなり優秀◎
発酵の技法
世界の発酵食品と発酵文化の探究
と言うキャッチフレーズそのまま
- 供進化力としての発酵
- 発酵の現実的なメリット
- 基本的な概念と機材
- 糖を発酵させてアルコールを作る:ミード、ワイン、そしてシードル
- 野菜を発酵させる
- 発酵を利用して酸味のある強壮飲料を作る
- ミルクを発酵させる
- 穀物とイモ類を発酵させる
- ビールなど穀物ベースのアルコール飲料を発酵させる
- カビを培養する
- 豆類や種子、ナッツを発酵させる
- 肉、魚、卵を発酵させる
- 事業化を考えている人のために
- 食品以外への発酵の応用
上記の全14章で、発酵技術をを使った食料品から、遺体の処理まで、世界中の発酵の技法が詳しく記載されたまさに教科書でありレシピ集。
この一冊で、我々が日常的に摂取している発酵食品のほとんどは、自分で作ることが出来るだろう。
これまでにこの本から作った発酵食品
- ヨーグルト
- ビール
- マッコリ
- キムチ
- 味噌
- 酢
- ザワークラウト
そして、この本の著者であるSandor Ellix Katz(サンダー エリックス キャッツ)氏は、解説の端々で、微生物の神秘を教えてくれる。
発酵好きにはたまらない一冊だ。
まとめ
ヨーグルトは体にも良いとは知っていたが、料理として食べると言う発想が無かった頃は、正直、毎日食べたいほど好きでは無かった。
しかし、サラダや餃子のソースにするなどの活用方法とその味を知ってからは、必要不可欠な食材となった。
そして食べるたびに思う、どんなに高いヨーグルトよりも自分で作ったヨーグルトが一番美味しい!と。
乳酸発酵は雑菌にやられることが少なく、初心者でもほぼ失敗しないのにこのクオリティーで完成してしまうのだ、皆さんも是非秘蔵の自家製ヨーグルトを作ってみてくれ。
ヤマシタ
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